政策インタビュー(15)沼澤弘平・愛知県政策企画局長

グローバル人材共生の政策に関わる実務者、識者らの政策インタビューの第15回は、愛知県の沼澤弘平・政策企画局長から、外国人材の現状と課題、県の施策、県の描く外国人共生社会の未来像について基本的な考えを聞きました。愛知県の大村秀章知事はNAGOMi愛知県支部の特別顧問を務めています。

外国人、外国人労働者とも東京都に次いで全国で2番目の多さ

―愛知県の外国人、外国人労働者の現状と課題について。

沼澤局長 愛知県の外国人住民数は、2023年12月末現在、東京都に次いで全国で2番目に多い約31万1千人と、過去最高を更新し、県の総人口に占める割合も約4.2%にまで増加しました。国籍別ではブラジルが最も多く、全国の約29%のブラジル人が本県に居住しています。近年では、ベトナムやインドネシアなど、アジア圏の割合の増加が顕著となっています。在留資格別では、「永住者」や「定住者」といった身分に基づく在留資格が全体の約6割を占めており、長期にわたり就労・居住する外国人県民が多いことが本県の特徴ですまた、愛知県の外国人労働者数については、2023年10月末現在、東京都に次いで全国で2番目に多い約21万人となっており、国籍別ではベトナム国籍の方が最も多く約5万2千人、産業別は製造業が最も多く約8万6千人となっています。在留資格別で見ると、技能実習生約3万9千人、特定技能約1万4千人と、いずれも全国最多となっています。人口減少・少子高齢化が進む中、県内企業におきましても人手不足感が高まっており、地域経済や地域社会を支える担い手として、本県に就労・居住する外国人の方は、今後も増加することが見込まれます。一方で、外国人材を受入れる企業側においては、外国人材の確保に向けた受入体制の整備などに課題を抱えているケースもあります。このため、外国人材の労働環境の整備や、地域における日本語教育の推進体制や多言語による相談支援体制の充実など、外国人の方が安心して働き、生活できる環境の整備がますます必要となっています。

「あいち地域日本語教育推進センター」「初期日本語教室」で日本語学習を充実

―これらを踏まえ、愛知県の施策内容はどのようなものですか。

沼澤局長 愛知県では、2008年から「あいち多文化共生推進プラン」を5年ごとに策定しており、現在は、2022年12月に策定した「第4次あいち多文化共生推進プラン」に基づき、様々な取組を展開しています。具体的には、2020年に設置した「あいち地域日本語教育推進センター」を中心とした地域における日本語教育コーディネーターの派遣や「初期日本語教室」のモデル実施、公益財団法人愛知県国際交流協会が運営する一元的相談窓口「あいち多文化共生センター」における外国人の方への多言語による情報提供や相談対応などを始め、外国人県民のコミュニケーションや生活支援のための取組を実施しています。外国人材を受入れる企業向けには、就労制限のないいわゆる定住外国人の雇用等に関する相談窓口を設置し様々な相談に対応するとともに、雇用、定着等を支援するセミナーを開催しています。また、定住外国人の雇用に意欲のある企業に対し、求人・採用から定着までを継続してフォローする伴走型支援を実施しています。この他、定住外国人向けには、仕事の探し方や、就職に関する疑問や悩みの解消等に関する相談に対応することにより就職支援を行うとともに、企業へのマッチング支援を行っています。さらに、2024年度は特定技能外国人等の受入れを支援するため、外国人材をはじめて受け入れようとする中小企業に対し、制度の概要、受入環境整備や定着事例を紹介するセミナー、個別相談会を新たに実施するほか、県内企業における外国人雇用の実態及び課題等を調査することとしています。

「あいち外国人材適正受入れ・共生推進協議会」を設置し相互連携を図る

―「あいち外国人材適正受入れ・共生推進協議会」を設置したと聞いています。

沼澤局長 2019年2月に、外国人材の適正な受入れや共生に向けた環境整備が適切に行われるよう、関係機関において情報共有や相互連携等を図ることを目的に、愛知県及び名古屋出入国在留管理局を事務局とし、国の関係機関、経済団体、労働者団体、自治体、支援団体の計19団体を構成団体とする「あいち外国人材適正受入れ・共生推進協議会」を設置しました。この協議会は、外国人材の労働環境の整備、外国人材の生活環境の整備、外国人材や子ども等の日本語学習・日本語教育の充実の3本柱について、各ワーキンググループで情報の共有や取組の相互連携を図ることとしております。そして、ワーキンググループを中心に、雇用や労働安全、多言語化や生活支援、職場・地域・学校における日本語教育や就学支援などについて現状や課題の認識を共有し、各構成団体において必要な取組を進めております。

―愛知県の描く外国人共生社会の未来像について。

沼澤局長 幅広い分野で多数の優れた外国人材が活躍し、地域に定着することは、地域活力の源となります。一方で、外国人の受入れ環境の整備に必要な支援は、教育、子育て、医療、福祉、年金など様々な分野にわたるため、県の施策推進にあたっては、国・市町村、企業、地域で活動する支援団体、外国人コミュニティ等、様々な主体と連携・協力して取り組む体制を構築していくことが不可欠です。国籍や民族などのちがいにかかわらず、すべての県民が互いの文化的背景や考え方などを理解し、ともに安心して暮らし、活躍できる地域社会づくりが重要であり、愛知県が目指す多文化共生社会の姿です。