政策インタビュー(2) 笹川博義・自民党外特委事務局長

外国人に働きたい国と思ってもらうことが重要な課題

グローバル人材共生の政策に関わる実務者、識者らの政策インタビューの第2回は自民党外国人労働者等特別委員会事務局長の笹川博義衆院議員が登場します=写真下は笹川衆院議員(自民党外特委事務局長)。笹川議員の選挙区(群馬3区)の太田市、大泉町は外国人人口比率の高い市町村として知られています。

―グローバル人材共生に関するご自身の考えを教えてください

笹川衆院議員 選挙区の太田市、大泉町は日系ブラジル人ら定住者と技能実習生・特定技能外国人の二層構造になっている。こうした混合型の地域は他に浜松市などあまり多くはない。外国人の方々とはモノづくりや介護など福祉を支えてもらう接点があり、政治家の出発点から取り組むべきテーマでした。技能実習生を受け入れることで従前の日系外国人に影響が出てきたり、多文化共生の中で考えなければいけないことは多々あります。ただ、日系外国人の受け入れ時と技能実習制度の本格導入時では社会背景が大きく変わってきており、低賃金の労働力を確保するという誤った古い経営の考えは変えてもらわなければならない。日本という国が外国人にとって働きたい、住んでみたいと思ってもらうことが今の重要な課題だと思っています。

環境と人権がモノづくりの競争力に不可欠な時代

―社会背景の変化とはどういうことですか。

笹川衆院議員 欧州などの動きを見てみると、これからのモノづくりで競争力となる要因は環境と人権です。環境や人権を軽視してモノづくりを進めると市場から追い出される。欧州で販売された絨毯(じゅうたん)がインドの児童労働によって生産されていると報道され、市場から追放される現実がある。生産履歴を追っていき、脱炭素などの環境の指針と同じく、人権についてもシビアな対応が迫られます。技能実習制度については失踪など人権に関わる問題が指摘されて改正がなされ、特定技能制度とも一体で考えていくことが大事です。

外国人政策の所管を一元化する議論をすべき

―ところで、特定技能制度は法務省、技能実習制度は厚労省・法務省と所管官庁が別々であり、両制度を整合性のとれたものに一元化すべきとの意見があります。

笹川衆院議員 人材育成、国際貢献を目的とする現行の技能実習制度を残す前提ならば整合性はとらなければならないし、もう一段上げて労働者として働いてもらう人材確保という前提に変えたならば、国も監理団体も受入企業も責務規定を果たしてもらわなければいけない。
外国人政策の所管については一元化する議論をしなければいけない。子ども家庭庁も文科省と厚労省の垣根を超えて一元化し、デジタル庁もそういう流れで設立された経緯がある。外国人にとっては法務省も厚労省も関係ない。建て付けは別としても、外国人労働者政策担当庁とか名称はともかく、所管を一元化する議論はしなければいけない。地方自治体、市町村にとっても、窓口が一本化した方が意見具申しやすく運用もスムーズになるだろう。

―水際対策の緩和策はどう考えますか。

笹川衆院議員 自民党の文科部会で青少年の学ぶ権利は尊重すべきだと発言しました。日本の青少年の海外での学ぶ機会を尊重するのと同じように、外国人が日本に来て学び、また日本に数年居たのだから母国へ帰る権利も尊重しなければいけません。水際の緩和策では入国の上限人数が話題になるが、何と言っても大事なのは留学、ビジネス、技能実習生らに対する国民感情だと思います。オミクロン株がピークアウトすることを前提で言えば、3月1日の緩和から間断なく第2弾の緩和策が実施されることを願います。

―自民党外特委の目的と事務局長としての抱負を聞かせてください。

笹川衆院議員 私は自民党外特委発足(初代委員長は木村義雄・現特別相談役)当初から委員長の補佐役などで関わってきた。外特委では外国人の労働・福祉政策を考える観点から移民の論議は扱わないことにしています。外特委で整理したいことは(1)短中期で日本の産業を支える外国人材はどうあるべきか(2)留学して就職する人材の永住権・国籍取得はどうあるべきか(3)永住する方々の個々の問題をどうすべきか―で3点です。外特委の議論は古川禎久・法務大臣の勉強会ともすり合わせ、政府与党として(7月予定の)参院選に提示していきたい。

【略歴】笹川博義(ささがわ・ひろよし)衆院議員
群馬3区(太田市、館林市、邑楽郡)選出、当選4回。自民党副幹事長。環境副大臣、環境大臣政務官など歴任。55歳。