「みどりの食料システム戦略」と技能実習制度の役割
NAGOMiの広報研修委員会はグローバル人材共生の政策に関わる実務者、識者らにインタビューし、提言や意見をまとめる新シリーズをスタートします。第1回は昨年12月のNOGOMiフォーラムin東京にパネルディスカッションとして登壇した武部新・農林水産副大臣から外食・農林水産分野の現状とグローバル人材の活用などについて聞きました=写真はパネルディスカッションに登壇した武部・農林副大臣。
―農林水産業の現状を教えてください
武部副大臣 農業を例にとると、普段の仕事として主に自営農業をしている基幹的農業従事者は、年々高齢化していて今後さらなる減少が見込まれます。2010年に同従事者人口は205万人で平均年齢66.1歳でしたが、2020年には136万人で67.8歳となりました。わずか10年で34%減少しています。その年齢構成も65歳以上が7割、49歳以下は1割とアンバランスな構造です。農林水産業の現場では、担い手不足と高齢化がものすごいスピードで進んでいます。
―農林水産分野におけるグローバル人材の活躍はいかがですか?
武部副大臣 2020年のデータによると、農業でのグローバル人材は3万8千人、うち技能実習生87%、漁業は3,629人、うち技能実習生92%です。外食業では留学生等の資格外活動が63%と多くを占め、飲食料品製造業では技能実習生が42%となっています。農林水産業や食品産業分野において技能実習生は重要な役割を担っています。
外食業においても経営管理や人繰りなどのマネージメントができるような人材のニーズがあると承知しています。日本のサービス業の質の高さは国際的にも評価は高く、この分野の技術や人材を取得したいとの海外のニーズも多いと聞きます。
―農林水産業の将来を展望して取り組んでいる政策は?
武部副大臣 農林水産省の大きな取り組みとして、昨年5月に「みどりの食料システム戦略」を策定しました。日本の農林水産業も気候変動による大きな影響が出ています。CO2ゼロエミッション化を農林水産分野でも進め、調達、生産、加工・流通、消費のサイクルの中で脱炭素、食ロス、グリーン化、化学肥料や農薬の低減などで環境負荷軽減を実現する必要があります。イノベーションによる生産力の向上と持続性の両立を図ります。これを成功させ、アジアモンスーン地域の持続的な食料システムのモデルとして打ち出し、国際ルール策定に参画したいと考えてます。
それと農林水産物の輸出拡大です。政府は2030年に5兆円という意欲的な輸出目標を立てています。今後モノの輸出だけではなく、日本式農業のノウハウを保護するスキームを構築しながら、海外でライセンス生産などを行い、広く市場を獲得する戦略が必要だと考えます。農林水産業分野でも「攻めの知的財産戦略」を促進すべきです。
「みどりの食料システム戦略」でも農林水産物の輸出拡大でも、日本の農林水産物の価値を知り、生産から流通・加工、消費へのバリューチェーンの仕組みや取り組みを理解する人材が海外で必要となってきます。将来、日本で農林水産業や食品産業で活躍した技能実習生がその役割を担ってくれることを期待しています。
―技能実習制度にどのようなことを期待しますか?
武部副大臣 アジアは日本にとって、政治的、経済的、安全保障上、最も重要な地域です。その中で技能実習制度はアジア諸国の「人づくり」の場として日本とアジアの共存共栄に大きな役割を果たしています。国際貢献の観点からも極めて有意義です。日本としても単なる労働人口の減少の側面からだけでなく、「みどりの食料システム戦略」のような国家戦略の観点から技能実習制度を活用していく必要があると思います。
【略歴】武部 新(たけべ・あらた)衆院議員
北海道12区(北見市、網走市、紋別市、稚内市、宗谷総合振興局、オホーツク総合振興局管内)選出、当選4回。農林水産副大臣。環境大臣政務官など歴任。51歳。