政策インタビュー(17)池田一彦・鳥取県商工労働部長

グローバル人材共生の政策に関わる実務者、識者らの政策インタビューの第18 回は、鳥取県の池田一彦・商工労働部長から、外国人材の現状と課題、県の施策、県の描く外国人共生社会の未来像について基本的な考えを聞きました。鳥取県の平井伸治知事はNAGOMi鳥取県支部の特別顧問を務めています。

県内の外国人労働者数、外国人雇用事業所数はいずれも過去最高

―鳥取県の外国人、外国人労働者の現状と課題について教えてください。

池田部長 鳥取県内の在留外国人数は、令和5年(2023 年)末時点で5,510 人、外国人労働者数は令和5年10 月時点で3,526 人(前年比14.8%の増)であり、外国人を雇用する事業所数も719 事業所(前年比5.3%の増)となるなど、労働者数、事業所数のいずれも過去最高となっており、製造業をはじめ卸売・小売業、建設業、宿泊・飲食サービス業、医療・福祉と、多様な産業分野で多くの外国人労働者が活躍している状況がうかがえます。国籍別では、ベトナムが最も多く、次いでフィリピン、中国、インドネシアの順になっており、在留資格別では、「技能実習」が1,698 人(48.2%)と最も多く、外国人労働者のほぼ半数を占めています。
労働力人口が減少し、人手不足が深刻となる地方において、外国人労働者は欠くことのできない存在であり、「育成就労制度」創設を見据えて、県内事業所においても受入れが一層加速するものと思われます。この際、本県で働き暮らすことを選択してくださった外国人労働者と地域社会に暮らす私たちが、共生社会をともに作っていくため、言葉や習慣や文化の違いを理解し、居住地域全体で受け入れていくこと、長らく定着いただけるよう融和的なコミュニティをどうつくっていくかということが大切です。

「多文化共生支援ネットワーク」を組織し雇用や生活など多様な相談に対応

―鳥取県の施策はどのようなものですか。

池田部長 本県では、平成31年(2019年)4月の新たな在留資格「特定技能」の創設に併せて、多文化共生を目指して、生活者としての外国人労働者の受入体制や環境整備に対する支援に、いち早く着手して進めてきました。
平成31年2月には、商工関係団体、教育機関、医療関係機関、その他関係機関及び行政機関等から構成される「多文化共生支援ネットワーク」を組織し、外国人雇用や在住外国人の生活等に関する多様な相談に対し、関係機関が連携して対応する体制を構築しました。同ネットワークでは、全体会議とともに、県内3地域(東・中・西部)の市町村等から構成される地域部会を開催し、相談状況や各種課題の共有・解決等に当たっています。さらに、在住外国人や外国人雇用を検討している企業等からのワンストップ相談窓口として、鳥取県行政書士会に「外国人雇用サポートデスク」を設け、外国人や企業からの相談に対応したり、(公財)鳥取県国際交流財団(以下「交流財団」)に「外国人総合相談窓口」を設置し、在留外国人からの生活・雇用に関する相談に対応したりしています。
交流財団に設置している「外国人総合相談窓口」では、在留手続や医療、子育て等の様々な相談を受けていますが、近年増加するベトナム人に対応するため、令和4年度から多文化共生コーディネーターとしてベトナム語対応職員を増員しています。また、令和2年度から「多文化共生サポーター」制度を創設し、現在、5団体3個人が県の委嘱を受けて、就職や子どもの教育、行政機関での手続に関する相談対応など、外国人住民と行政との間に立って橋渡し的な役割を果たしています。
また、交流財団では医療・コミュニティ通訳ボランティアの派遣も行っており、妊婦検診や子の保育所入所手続への通訳等に対応しています。このほか、令和2年度からはFacebookを活用し、大雨や台風などの災害情報をはじめ生活支援情報を発信しています。

外国人材労働者が働きやすい、住みやすい環境を整備し多文化共生社会を推進

―鳥取県の描く外国人共生社会の未来像は。

池田部長 地域の労働力不足に対応し、産業を持続可能なものとするため、さらには、高度化に向けて即戦力となる高度外国人材の獲得を進めていくことで、今後も外国人労働者は加速的に増えていくであろうと考えています。
外国人材労働者が働きやすい、住みやすい環境を整備していくとともに、外国人の生活習慣等を理解・尊重するなど、人権へ配慮しながら、積極的に多文化共生社会を推進していきます。
技能実習制度に代わる新たな制度「育成就労」では、本人意向による転籍が認められていますので、技能実習制度と同様、地方部から都市部への労働力の移動が懸念されるところです。都市部への流出の主な要因として給料の比較があると思いますが、トータルの住環境、地域の温かさ、教育、医療へのフォローなどお金では計ることが難しい、地方での暮らしやすさの充実に向けて、市町村や商工団体、教育機関、その他関係機関とも連携を図って、鳥取県が外国人に選ばれる地域となるように、環境づくりを進めていきたいと考えています。