政策インタビュー(16)梶村和秀・宮城県経済商工観光部長

グローバル人材共生の政策に関わる実務者、識者らの政策インタビューの第17回は、宮城県の梶村和秀・経済商工観光部長から、外国人材の現状と課題、県の施策、県の描く外国人共生社会の未来像について基本的な考えを聞きました。宮城県の村井嘉浩知事はNAGOMi東北ブロック協会の特別顧問を務めています。

ベトナム、インドネシア政府と人材の供給に関する協力覚書を締結

―宮城県の外国人、外国人労働者の現状と課題を教えてください。

梶村部長 宮城県内の在留外国人数は令和5年12月末時点で、27,009人となり、過去最高を記録しました。一方で県内総人口は減少を続けており、本県の主幹産業である水産業等においては、深刻な人材不足が課題となっております。そのような状況下で、本県の外国人労働者数は令和5年10月末時点で16,000人を超え、産業を支える貴重な人材として欠くことができない存在となっています。より多くの外国人材に就労いただくため、昨年ベトナム政府・インドネシア政府と人材の供給に関する協力覚書を締結し、就労を希望する若い人材を積極的に受け入れていくこととしました。それに加えて、台湾企業の半導体製造工場の県内立地の決定や、東北大学の国際卓越研究大学の認定等に伴い、高度人材や留学生を含むより多くの外国人が本県に転入する見込みであり、今後、急激に増えることが予想される外国人材への生活環境整備等への積極的な支援に取り組むことが必要となっています。

インドネシアのジャカルタでジョブフェアを開催

―宮城県の施策は。

梶村部長 まずは、人手不足解消のため、今年9月にインドネシアのジャカルタでジョブフェアを開催いたします。外国人材の採用に意欲的な県内企業50社と現地に赴き、若い優秀な人材と企業がマッチングする場を提供したいと考えています。これだけ大規模なものは、国内初と考えています。さらに、令和7年4月に開校を予定している大崎市立おおさき日本語学校においては、長期課程として、1年から2年のコースを設置する予定であり、卒業生には地元企業を積極的に紹介するなどして、即戦力となる外国人材に地元に定着いただけるよう支援していきます。また、台湾企業の皆様に安心して県内でお過ごしいただくため、台湾の方向けの相談ダイヤルを設置し、24時間体制で受付をします。さらに、立地周辺自治体と連携し、多文化に関するシンポジウムなどを開催して、台湾の方々と地域住民の方々が、今後様々な交流文化を広げていただけるような素地を今から着実に進めていきます。

全国に先駆けて「多文化共生社会の形成の推進に関する条例」を制定し15年経過

―宮城県の描く多文化共生社会の未来像は。

梶村部長 本県の「多文化共生社会の形成の推進に関する条例」では、基本理念として、多文化共生社会の形成の推進、豊かで活力ある社会の実現には、国籍、民族等の違いにかかわらず、「個人の尊厳が重んぜられること、個人の能力を発揮する機会が確保されること等により県民の人権が尊重されること」と「県民が地域社会の対等な構成員として地域社会における様々な活動に主体的に参画すること」が必要であると掲げています。条例が制定され15年以上経過した今、我が県の産業基盤を支える外国人材の皆様に、これまで以上にお支えいただくことが求められています。日本・宮城県内の社会情勢は大きく変化していますが、この条例の理念は色あせてはおりません。引き続き、本県が活力ある地域となるよう、多様な主体がその能力を発揮し、多様性を生かした活力のある地域になることを目指しております。