政策インタビュー(8) 塩崎彰久・自民党情報調査局次長

グローバル人材共生の政策に関わる実務者、識者らの政策インタビューの第7回は自民党情報調査局次長の塩崎彰久衆院議員から同党青年局ベトナム訪問団に参加して感じた外国人材送り出しの現状や受け入れの基本的な考えなどについて聞きました。塩崎議員は衆院愛媛1区選出で、シングルマザーを支援する「ひとり親家庭議員連盟」や次世代のインターネットと注目されるWeb3(ウェブスリー)プロジェクトチームでそれぞれ事務局長を務めています。

青年局訪問団に参加してベトナムとの結びつきの深さを再認識

―自民党青年局ベトナム訪問団に参加した感想を聞かせてください。

塩崎衆院議員 今回、ベトナムを訪問して、ベトナムと日本は結びつきが深くお互いにとって大事な国であることを再認識しました。到着すると、青年局のバスの前にパトカーが先導して渋滞の中を走ってくれた。翌日からフエ国会議長、フック国家主席に会っていただき、歓待してくれました。青年局を含めて、長い議員外交の積み重ねがあったからこその歓迎だと思いました。フック国家主席が「日本とベトナムは東シナ海、南シナ海を守っていく共通の利害関係を持つ戦略的なパートナーだ」と話しましたが、まさに安全保障で地政学、地形学上の関係があり、経済安全保障の観点から深い共通の利害関係を有しています。もちろん経済面で言えば、日本へ多くの外国人が働きに来ていただいている。これから人口が急減する日本にとってはまさに同胞であり、戦略的なパートナーであるわけです。いかに大勢の優秀なベトナムの若者に日本で活躍をしていたげけるのか。これは国家戦略そのものです。ハードとソフトの両面で、かけがいのないパートナーです。

―ベトナムの送り出しについては。

塩崎衆院議員 視察した時に、必ず出てくるテーマはベトナム人材の海外派遣の話でした。経済的に重要なだけではなく、そこに問題があることは双方ともに認識している。視察したハノイの送出機関(LOD 人材開発)では、30 人ぐらいの若いベトナム人女性が目をきらきらさせながら日本語を勉強していた。本当に純朴な女性たちで「これから日本に行くのが楽しみです」と言っていた。それを見た時に、この女性たちの誰かが日本に来て、犯罪者や失踪者になってしまうとしたら、それはこの子たちのせいではなく大人たちの側の責任だと感じました。視察中のどの会議でも(失踪などは)ベトナムと日本の双方が解決しなければいけない問題だということが話し合われました。

人権などガバナンスの仕組みを整え不断の取り組みが必要

―9月6日にダオ・ゴック・ズン・労働・傷病兵・社会問題省大臣が講演してベトナム人海外労働者派遣法改正などについて話されました。

塩崎衆院議員 ズン大臣から法改正について話していただいた。ベトナム政府は人権侵害の温床となっている実習生の借金をなくすため、送出機関による仲介手数料の徴収を禁止した。相当思い切った対策をとられたなと感じた。「さあ、我々はやりましたよ。今度は日本がやってくれますよね」。こういうメッセージだと思います。日本側でも99%の受入企業はちゃんとしていたとしても1%が実習生を日本人と同様に扱わず、不適切な対応をしていれば、日本全体のイメージが損なわれてしまう。そういうことがないようにガバナンスの仕組みをしっかり整えていかなければいけない。実習生の声をちゃんと聞きながら、問題がないように不断の取り組みをしていくことが必要だと思います。

―技能実習制度と特定技能制度の改正については。

塩崎衆院議員 愛媛県でも6千人近い技能実習生がいる。地方は切実な問題となっている。日本経済を支えている中小企業がこれからしっかりと活動を続けていくうえからも海外からの優秀な人材に来ていただいて学びながらやっている。ますますニーズが高まっていると思う。そういた時に、大事になるのは、来ていただいた技能実習生の立場からみて、未来の明るいキャリアパスは見えるということだ。技能実習生で来て、技能を学んで本国に帰る方もいるし、日本に残って特定技能に移行して働いてもらうケースもある。技能実習と特定技能という制度が、ばらばらに運用されるのはなく、一体的なものとして外国人の若い方々を教育し日本で働いて幸せな人生を送っていただくためのシステムにつくっていくことが重要です。

「選ばれる国」になるため将来を描ける一貫したシステムを

―日本は円安です。相対的に給与水準が下がっている。選ばれる国になるため、何が大切ですか。

塩崎衆院議員 円安をチャンスと捉えるべきです。我々の意識の中でいままで高いおカネを払っているのだから来て当然だろうという意識を持っている面があったとしたら、そこは改めなければいけない。おカネだけではなくて、日本という国であったり、文化であったり、受け入れる企業の経営者の人柄であったり、社会としての暖かさ、そしてキャリアとして一貫した将来への道筋を描けるシステム、こういったものの魅力で選ばれる国になっていくことが大切です。円安は「日本の魅力とは何か」の原点を振り返る、良い機会を与えてくれました。政府の視点や受け入れ企業の視点でなく、「青春の大切な何年かをどの国にいて人生を過ごそうかな」と悩んでいる18 歳の若者の視点に立った魅力ある人材育成のシステムや制度改革が必要なのではないかと思います。

【略歴】塩崎彰久(しおざき・あきひさ)衆院議員
衆院愛媛1区(松山市)。当選1回。長島・大野・常松法律事務所弁護士、官房長官秘書官など経て2021 年10 月の衆院選で初当選。自民党情報調査局次長。46歳。