政策インタビュー(12) 石川博崇 公明党参議院議員

グローバル人材共生の政策に関わる実務者、識者らの政策インタビューの第12回は、公明党外国人材の受入れ対策本部長の石川博崇参議院議員から、外国人材の受入れや「選ばれる国」になるための基本的な考えを聞きました。石川議員は外務省で中東の在外公館勤務などを経て政界入りし、公明党参議院政策審議会長として党の政策提言のまとめ役で活躍しています。

外国人材のライフステージに合わせたきめ細やかな対応が重要

―外国人材の受入れの基本的な考えを聞かせてください。

石川参院議員 人口減少、少子高齢化で日本社会はこれから深刻になってくる。社会の担い手である就労人口も減ってくる。待ったなしの状態です。労働力人口の減少と経済規模の縮小が社会全体に大きな影響を及ぼす。グローバル社会における国の在り方として共生社会を目指していくということは不可欠です。その観点から公明党として外国人材の受入れ対策本部で議論を重ねてきました。グローバル社会の中で多くの外国人材の皆様に日本を選んでいただける環境づくりを構築していくことが非常に大事だと思っています。

―特に公明党として力を入れることは何ですか。

石川参院議員 公明党は「小さな声を聞く」ということを標ぼうさせていただいています。外国人材の方々に日本で働きたいと思っていただける環境づくりを目指すため、とかく我々は「外国人材」と十把一絡(じっぱひとから)げで考えがちですが、ひとりひとりの置かれた状況はそれぞれ違うと思うので、日本に来られた方々の出身国や言語、習慣、そして家族構成や働かれる業種ごとにきめ細やかな政策が必要だと思います。まさに外国人材ひとりひとりの状況に合わせたきめ細やかな、小さな声を拾いながら環境改善を図っていくことが大切です。それをすることがまさに日本を選んでいただけることにつながると考えています。ともすれば技能実習制度はどうすべきか、特定技能制度はどうしたらいいのかと大きな議論になってしまいがちですが、現場に即したきめ細やかな対応ができるように努力していきたいと考えています。

―具体的に「小さな声」とはどういう声ですか。

石川参院議員 最近の例だと、留学生で学生時代に飲食業界でアルバイトをしていた外国人材の方がいました。飲食業界にそのまま就職しようと思っていましたが、飲食業界で勤務するには在留資格が特定技能しか選択肢がほぼないので、特定技能の試験を受けなければいけない。たまたま就職時期と特定技能の技能試験の時期がずれていて受けることができなかった。そういうひとりひとりの人生のライフステージに合わせたきめ細やかな対応がもっともっと求められてくると思います。社会保険をどうするのか、長期的に永住まで考える方の年金、家族の受入れをどうするのかなど対応すべき点は多いと思います。

親日外国人の層は今も分厚い 日本の価値が劣化する前に危機感を持って議論

―円安などで日本の魅力が少なくなったとの声も聞きます。

石川参院議員 この20年、日本の地位が落ちたとか、円安もあって、悲観な言い方をする人がいますが、まだまだ日本への魅力はあるし、親日外国人の層は分厚いと思っています。私は(外務省時代に)中東で長く仕事をさせていただきましたが、誠実さ、真面目さ、納期を守る、仕事が一生懸命で嘘をつかないなど日本のブランド力といいますか、単なる給料ではなく、こういうところで働きたいと思っていただいている外国人がまだまだ多いと考えています。しかし、それに甘えていてはいけないので、選んでいただけるため、さらに何ができるかを今しっかりとしておかないと日本の持つ価値がどんどんと劣化していくと思います。そうした危機感を持って、国としても技能実習と特定技能の在り方をどうしていくのか真剣に議論をしてその結果を出していかなければいけないと思います。

技能実習制度と特定技能制度を一体的に考えていくことには共感

―NAGOMiは技能実習制度と特定技能制度の一体的改革を提言していますが、どう受け止めていますか。

石川参院議員 NAGOMiは武部勤会長を先頭に中長期的な日本のあるべき姿を見通して精力的な議論をされ、度重なる提言を政府・与党にしていただいていることに敬意と感謝を申し上げます。公明党としてもこれを重く受け止め、有識者会議の中間報告に合わせて提言を出していきたいと考えています。今の技能実習制度が、技能移転による国際貢献を名目にしながらも実際には人材確保に使われているという乖離があることは変えていかなければいけないと思います。一方で、特定技能に入る方の7割以上が技能実習を経験している。技能実習で日本に来られる方の中には特定技能に移ることを前提にしている方も多い。そうしたことから技能実習制度と特定技能制度を一体的に考えていくことは共感できます。

「誰一人取り残さない」共生社会を構築 互いに包摂し合える社会を

―公明党が考える多文化共生社会とはどういうイメージですか。

石川参院議員 公明党は内政、外交ともSDGsの基軸である「誰一人取り残さない」社会の実現を目指しています。日本に来られた外国人材のひとりひとり、誰も取り残さない共生社会を構築することが重要ではないかと思います。日本人と外国人の間に格差とか差別、偏見があってはなりません。互いが互いを尊重し、包摂(ほうせつ)し合える社会を築いていかなければならないと思います。それが日本の国力にも直結するし、国際社会から日本が「安心・安全の国」であることの信頼を勝ち得ることにもつながります。ひいては対立と分断が進んでいる国際社会において、日本がアジアの国々と欧米各国をつなぐ橋渡し役として大きな役割を果たすことになり、日本の平和と安全保障にもつながるのではないかと考えています。

【略歴】石川博崇(いしかわ・ひろたか)参議院議員
参議院大阪府選挙区。当選3回。外務省で勤務した後に政界入り、防衛・内閣府政務官などを歴任。現在、公明党参議院政策審議会長、公明党大阪府本部代表。49歳。