政策インタビュー(11) 宮崎政久 自民党法務部会長

グローバル人材共生の政策に関わる実務者、識者らの政策インタビューの第11回は自民党法務部会長の宮崎政久衆院議員から外国人材受け入れや「選ばれる国」になるための基本的な考えを聞きました。宮崎議員は弁護士を経て政界入りし、法務行政のスペシャリストであるとともに沖縄県の振興などのために尽力しています。

全ての政策は国益の増進のため 複眼的な思考が重要

―外国人材受け入れの基本的な考えを聞かせてください。

宮崎衆院議員 全ての政策は国益の増進のために行うべきだと考えています。それを複眼的にみることが重要です。単純化すると誤った方向にいきやすい。私は法務の世界に関わってきましたから多文化共生社会の実現は非常に重要だと思います。外国人材受け入れの方向に向かっていかなければ国益の増進は図れないと考えています。その時に必要なのは複眼的な思考です。単眼的に見ると、日本人の雇用の場がなくなるとか、労働力不足から日本は衰退していくのでどうしようもならないとか、この思考は弊害になります。決まっていることは人口減少が避けられないことです。例えば、単純に移民がたくさん来てくださいとの政策を日本人が受け入れられるはずはない。逆に、誰も来るな、純血主義だというのは荒唐無稽で話にならない。

―では外国人材をどういう雇用すればいいのでしょうか。

宮崎衆院議員 日本人がしっかりと雇用を確保できる。それでも足りないことが分かっているなら、外国人材に来てもらって働いてもらう。外国人材を便利に便宜的に使うことは国益を毀損します。だから共生社会を実現することが必要なわけです。国益は経済的な数値だけで図れるものではない。今ここに一度限りの人生を過ごしている個々人の満足度も重要な指標です。そうなるとジョインしてともに生きていく、共生できる社会の中で暮らしていくことによって日々の喜びがある。要するにスマイル・フレンドリーのようなものであり、そこに近づけていくことが必要だと思います。

「おもてなしの文化や国柄が素晴らしい」と言われる共生社会を

―日本が「選ばれる国」になるため必要なことは何ですか。

宮崎衆院議員 為替の問題はあまり考えなくてもいいと思います。世界中にはいろいろな人がいて、言葉も宗教も文化も違っている。法的に言えば、主権国家の併存状態です。地球は国家の単位でしかまとまりきれていない。ここに言語の違い、育ってきた文化の違いがありますから、日本が日本人であることをきちんと意識したうえで、外国人から「おもてなしの文化や国柄が素晴らしい」と言われる共生社会を目指していくことが必要です。他方、築き上げてきた文化の中には排外意識とか島国根性とかの側面もあるが、孤立するのではなく、共生の観点をしっかり意識していけるようにコントロールしていくことが必要だと思います。

―日本にはアジアから多くの外国人材が来ています。どんなアジア観を持っていますか。

宮崎衆院議員 大前提は一つ一つの国は全て違うということです。ここをしっかりと認識すべきでしょう。共に生きていく覚悟と決意でやっていくことが肝要です。私は沖縄生まれでも育ちでもありませんが、沖縄県の選挙区から立候補しました。沖縄県知事経験者の仲井真弘多氏が応援演説で「宮崎候補は本土から大人になって沖縄に来て弁護士をして30年になる。彼はウチナンチュー(生粋の沖縄の人)じゃないと言う人もいるが、私だって400年遡れば、中国人ですよ。沖縄のために真剣に働いてくれる人ならいいじゃないですか」と励ましてくれた。琉球王朝時代、中国(明朝)から久米36姓と呼ばれる職能集団が渡ってきて居住した。仲井真氏は久米36姓の末裔だと公言しています。他の場所から移動し、そこで暮らし、納税もする。ここに共生社会の複眼的な本質がある。国の違いはしっかりと認識するが、移動は普通のように起きている。それぞれの人間の人生は一回しかない。限られた人生の一瞬を同じスペースの中で過ごしていくのであればともに充実した時間を送れるように配慮をしていくことが重要だ。私はこうしたアジア観、世界観を持っています。

入管庁だけでなく厚労省などとの一体的な運用が大切

―技能実習制度、特定技能制度の在り方をめぐり、有識者会議が発足し、来春に中間報告をまとめ、秋に最終報告を出す。我々は技能実習制度と特定技能制度の整合性のある一体的な改革を提言していますが、どう考えますか。

宮崎衆院議員 私も両制度の整合性が重要だと考えています。日本の民族性であったり、様々な国家認識から、当初の技能実習制度は本音と建前のミックスでつくった面が否めず、業種についても現実的でないところがあった。特定技能制度においては、登録支援機関についても見直す必要がある。制度は一回つくったら改正をしていけばいい。複眼的な思考で、制度に手を加えることは必要です。「選ばれる国」になることの競争にさらされていることを踏まえて考えてみると、(外国人材政策に特化した)特定の庁を新設することが必要かどうかにはやや疑問があるが、意識の統一を図って政策遂行していくには司令塔がしっかりした方がいい。そうなってくると出入国在留管理庁が今やっている業務の中でやるのは荷が重いので、そこは厚労省などとのより一体的な運用を考えたほうがいいと思います。

【略歴】宮崎政久(みやざき・まさひさ)衆院議員
九州ブロック選出(沖縄2区)。当選4回。長野県生まれだが、司法修習生の修習地として那覇地裁を選んだのを機に沖縄県に移住。弁護士を経て政界に進出し、党政務調査会長補佐、法務大臣政務官などを歴任。現在は党法務部会長。57歳。