政策インタビュー(10) 松川るい 自民党外交部会長代理

グローバル人材共生の政策に関わる実務者、識者らの政策インタビューの第10回は自民党外交部会長代理の松川るい参院議員から外国人材受け入れや「選ばれる国」になるための基本的な考えを聞きました。松川議員は外交・安保の専門家として活躍する一方、自民党女性局長の役職に就き、次世代のリーダー候補として期待されています

日本には外国人材と共生できる素地が十分にある

―外国人材受け入れの基本的な考えを聞かせてください。

松川参院議員 日本はこれまで外国人材受け入れには慎重な姿勢でとってきましたが、第一にグローバル化する世界経済の中で能力のある外国人材に活躍していただくことは日本経済にとっても良いことだと思います。第二に少子高齢化する人口動態の中で人手不足の業種がたくさんあり労働力としての外国人材は必要だと思います。第三に外国人材と共生していくことができる社会であってほしいと思います。日本は多神教の国で融通無碍なところがあり、外国人材に対しても本質的に受け入れてしまえば、あれは駄目、こうでないと駄目というのはもともと日本の民族性にはないので共生できる素地は十分にあります。外国人材に能力を発揮してもらい、それが日本の経済にとって刺激になるような有り様があっていいと考えています。

透明性があって快適な労働環境に向けた改善が必要

―日本が「選ばれる国」になるためにどうすればいいでしょうか。

松川参院議員 外国人材を惹きつける魅力ある国にするためには、まずは(外国人材が)言葉の壁を乗り越えられるように、市役所に行ったら英語でも話が聞けるとか、日本語を学べる機会を提供したり、環境をつくることが必要です。次に、今は働き方改革が叫ばれていますが、外国人材が休みやインターバルが取りやすかったり給与体系や契約関係がはっきりと明確であるとかそういうことが重要だと思います。5年間、日本に来て稼いで帰るのだったら問題ないですが、日本で長く働きゆくゆくは暮らしていきたいと考えている外国人材に対しては子どもの教育環境を整備していくことも大切でしょう。金融や研究職などの高度人材は質の高いインターナショナルスクールなどの教育環境を求めているのではないかと思います。一方、技能実習生については低賃金とか不当な労働環境が一部で問題視されていますが、そうではなく透明性があって快適な労働環境にするベーシックな改善が必要だと思います。

日本の魅力は親切な国民性も 根本的な経済発展で「円安」を乗り越える

―円安の日本は経済的な魅力が薄れているとの指摘もあります。

松川参院議員 賃金について言えば、中国が高ければ中国に行くとの見方もありますが、日本という国は他の国にはない良さがあります。私は(外交官として)いろいろと国に住んできましたが、日本は犯罪が少なく治安が良いうえ、水が安全で食べ物が美味しい。それに親切な国民性であることは日本の魅力であり選ばれる要素の一つだと思います。政治も安定しているので抑圧された国から来た人にはいいんじゃないでしょうか。円安になると持ち帰る時や送金した際に(賃金が低くなるので)魅力的ではなくなるという気持ちは分かります。しかし、私は根本的に日本の経済力が落ちていることが要因だと思いますし、日本経済はもう一度復活しなければなりません。一朝一夕にはいかないかもしれませんが日本自身のためにやらなければならないことです。経済的に発展し、技術力を持つ国になることは質の高い外国人材が来ることに直結します。

―外国人材に対する人権侵害などの指摘もありますがどう受け止めていますか。

松川参院議員 技能実習生に対してきちんとした扱いをしていないのは、一つは受け入れ企業自体に問題があることが原因です。いくら人手不足だからと言っても、意識の低い経営者は(外国人材だけでなく)日本人に対する扱いも駄目ですから、スクリーニングはできると思います。そうした経営者のいる受け入れ企業に技能実習生を渡さないということが必要であり、監理団体が的確にチェックすることが必要です。ところが、その監理団体は3000超もあり、(玉石混淆な)監理団体についてもまともな能力はあるところに絞る必要があるのではないでしょうか。人権侵害が起こらないように、監理団体の機能(斡旋、支援、保護、監査)をきちんと果たせるように要件を厳しくする必要があるでしょう。規模感がなくて通訳を雇えないなど十分な対応ができないと淘汰されるとなると、まともな監理団体だけが残る。まともな監理団体が残れば、受け入れ企業も実習生に対してきちんとした扱いをしなければいけなくなる。この点を第一に具体的に行うべきです。

技能実習制度の機能は地方や中小企業にこそ意味がある

―技能実習制度は残すべきと思いますか。

松川参院議員 技能実習制度は建前と実態が乖離している面があるが、機能として人手不足の地方や中小企業にこそ意味があると思います。地方は給与が安い傾向があるので放っておくと賃金の高い大都市圏にばかり外国人材が集中することなる。技能実習制度があるおかげで(特定技能にはない)様々な業種において、人材が地方にまで分散されている。技能実習制度の目的である技術移転による国際貢献という建前はどうかと思うが、それを掲げることによって(地方や中小企業へ)分散ができる機能があることは悪くないスキームではないかと思います。人権面や待遇をきちんと改善すれば、(基礎的な人材育成期間として)技能実習生が日本に来て日本語を学んでキャリアアップできるという希望のある、本来あるべき姿になれば、技能実習制度はあってもいい制度だと思います。

技能実習から特定技能に入る一貫した人材育成システムで

―特定技能制度についてはどうですか。

松川参院議員 特定技能制度を拡充するだけだと東京圏、名古屋圏、大阪圏、福岡圏の大都市圏に集中しかねないことを懸念します。(5年間の受け入れ目標が)34万5,150人とされる特定技能外国人がそうした大都市圏だけに分散され、地方から外国人材がいなくなる事態も想定されるます。それは本来、我々が目指しているところではないはずです。外国人材が技能実習から特定技能に入る一貫した人材育成システムによって日本で素晴らしい技能が発揮できればいいと思います。

【略歴】松川るい(まつかわ・るい)参院議員
大阪府選出。当選2回。外務省総合外交政策局女性参画推進室長などを経て政界へ進出し、防衛大臣政務官兼内閣府大臣政務官、2025年大阪・関西万博推進本部事務局長、党国防部会長代理など歴任。現在は党女性局長、外交部会長代理。51歳。