グローバル人材共生の政策に関わる実務者、識者らの政策インタビューの第9回は自民党外国人労働者等特別委員会(外特委) 委員長の松山政司参院議員から、外特委の役割や技能実習制度・特定技能制度改正の見通しなどについて聞きました。
松山議員は8月の内閣改造・党人事で外特委特別委員長に再任され、参院自民党政策審議会長の要職にも就いています。
人権侵害が発生しない仕組みの構築や制度設計の見直しが必要
―外国人材受け入れの基本的な考えを聞かせてください。
松山参院議員 外国人材は地域や社会を支える人材として貴重であると認識しています。その受け入れとして、技能実習、特定技能の両制度があるが、これを見直していくことが喫緊の課題だと思います。技能実習に関しては国際貢献が制度の目的であるが人手不足を補う労働力として扱っている実態との乖離が指摘されています。一部の受け入れ企業による人権侵害や労働関連法違反が発生しています。このような状況が発生しない仕組みの構築や制度設計の見直しが必要です。極めて深刻な人手不足なので特定技能制度ができたわけですが、目標とした34万5千人と比較して、今年8月時点で10万1千人とコロナの状況があったにせよ目標を大きく下回っています。今後、外国人材をどのように受け入れていくのか、各分野の特性や制度の関連を含めてしっかりと議論していく必要があると考えています。
「選ばれる国」になるため安心・安全で暮らせる環境づくりを
―外国人材から日本が「選ばれる国」になるためにどうすればいいですか。
松山参院議員 現在、少子化が進む中で労働力不足が深刻になっている。一方で、長期間にわたった水際対策に加え、ここに来て円安もあって給与水準は決して高くはない。国際社会の中で、その地位が相対的に低下し、今や外国人から見た日本は働くための唯一の場所ではなくなってきているのではないでしょうか。選ばれる国になるためには、外国人材に、働きたい、暮らしたい、学びたいと思ってもらうことが大切です。人権の保護はもちろんですが、賃金や労働時間、就業環境の改善、安心・安全で暮らせる環境をしっかり確保してやることが重要です。そのために外国人材の目線に立って、外国人材が直面する課題の実態把握とその分析が必要だと思います。
―多額の借金を抱えて来日することが失踪などの一因になっています。ベトナム政府は今年、ベトナム人海外労働者派遣法を改正し、送出機関による仲介手数料の徴収の禁止やサービス手数料の50%削減など改善に着手しました。受け入れ側としてはどう対応すればいいですか。
松山参院議員 技能実習生については高額の手数料が実習生の負担となっていると指摘されています。そのことが失踪などの要因になっており、多額の借金を背負って来日するようなことを見直さなくてはならない。そのためには一部の不適切な送出機関に対して両国間の取り決めに基づいて送出国に通報し、厳正な対処を要請することが重要ですが、それだけではなくて、受け入れ側も主体に改善する必要があります。行政だけではなく、受け入れ事業者の責務も明確にしながら厳正に対処することが重要ではないかと思います。
ベトナム政府は海外労働者法を改正して実習生の負担の緩和に取り組み、悪質な送出機関を調査、取り締まりをすると適正な運用努力を行うようになりました。しかし、依然として実習生が高額な借金を背負っている現実もあるので、引き続き外国人材受け入れの事業者の責任の明確化をはじめ受け入れ側の議論をしていく必要があると思います。
技能実習から特定技能へのスムーズな移行などが改善点
―10月28日に外特委がスタートしますが、外特委の役割と技能実習制度・特定技能制度改正の見通しを聞かせてください。
松山参院議員 政府は古川禎久前法務大臣の時から有識者による大臣勉強会などで議論しています。外特委としては今後、(政府の)有識者会議における意見や報告を受けながら、それを踏まえて議論していきたいと考えています。技能実習・特定技能両制度の見直しの方向については、両制度の関係を含めて、時代にあった、外国人目線に立った整合性のある仕組みづくり、制度設計が重要だと思います。現行制度の改善すべき点は、業務実態に沿った区分のあり方、手続きの簡素化、技能実習から特定技能へのスムーズな移行などが課題であろうかと思います。外特委において、このような課題の解決に向けてあらゆる方々の意見を踏まえて議論していき、積極的な提言をしていきたいと思っています。来年春ごろに政府から中間報告をもらえれば、それも踏まえて政府の「骨太の方針」に(法改正の)方向性を明記するようなスケジュールになると考えています。
―NAGOMiは技能実習制度と特定技能制度の整合性のある一体的改革を提言していますが、どう考えますか。
松山参院議員 NAGOMiから助言や提言をいただき現状認識をするうえで非常に参考になっています。真面目に取り組んでいただいている意見としてきちんと受け止め、生かしていきたいと思っています。
【略歴】松山政司(まつやま・まさじ)参院議員
参院福岡県選挙区。当選4回。日本青年会議所会頭、参院自民党国会対策委員長、内閣府特命担当大臣などを歴任。現在は参院自民党政審会長、裁判官弾劾裁判所裁判長、自民党外国人労働者等特別委員長。63歳。